稲田堤ふくまるハートクリニック|循環器内科、内科、呼吸器内科、糖尿病内科

稲田堤ふくまるハートクリニック|循環器内科、内科、呼吸器内科、糖尿病内科|京王線「京王稲田堤駅」南口 徒歩2分

心不全

1. 概要

心不全とは、心臓のポンプ機能が低下して全身に十分な血液を送り出せなくなった状態を指します。日本循環器学会では一般の方向けに「心不全とは,心臓が悪いために,息切れやむくみが起こり,だんだん悪くなり,生命を縮める病気です」と定義しています。つまり、心臓の機能が低下することで呼吸困難(息切れ)や疲れやすさ、むくみといった症状が現れ、放置すれば徐々に悪化していく進行性の病気です。

なお、「心不全」という言葉から心臓が完全に止まってしまうような印象を受けるかもしれませんが、実際には心臓は動いているものの弱っている状態であり、適切な治療によって症状をコントロールすることが可能です。

心不全とは
2. 原因

心不全を引き起こす原因となる疾患には様々なものがあります。
主な例を挙げると、
  • 高血圧症(長年の高血圧による心臓への負荷)
  • 虚血性心疾患(心筋梗塞や狭心症など)
  • 心筋症(心臓の筋肉そのものの病気)
  • 心臓弁膜症(心臓の弁の閉鎖不全や狭窄症)
  • 不整脈(心房細動などの重度の不整脈)
  • 先天性心疾患(生まれつきの心臓の構造異常)
これらによって心臓に器質的・機能的異常が生じると、十分な血液を送り出せなくなり心不全に至ります。

3. 症状

心不全では、心臓のポンプ機能低下による血行不全と体液のうっ滞により様々な症状が現れます。代表的な症状は息切れ・呼吸困難、むくみ(浮腫)、動悸、倦怠感(体のだるさ・疲れやすさ)です。

階段を上ったときに息切れがひどくなる、少し動いただけで胸がドキドキする、靴下のあとが消えないほど足がむくむ、体が疲れやすい等の症状がみられます。症状が進行すると安静にしていても息苦しくなり、横になると呼吸が苦しくて眠れないこともあります。症状が出始めると、急速に悪化する場合もありますので、我慢せずすぐに受診しましょう。
階段を上ったときに息切れがひどくなる
4. 診断のための検査

心不全が疑われる場合、医師の診察に加えて以下のような検査を行います。当クリニックでは心エコーや心電図、レントゲン検査、NT-proBNP測定などを即日実施でき、その日のうちに結果をご説明することが可能です。
  • 胸部X線検査(レントゲン): 心臓の大きさ(心拡大)や肺のうっ血・胸水の有無を確認します。心不全では心臓が肥大したり肺に水が溜まるため、レントゲン写真でそれらを評価します。
  • 心電図検査: 不整脈の有無や、過去の心筋梗塞の有無、心臓の負担状態などを調べます。
  • 心エコー検査(心臓超音波): 超音波で心臓の構造と動き、大きさ等を観察し、心機能の評価及び弁膜症の有無を調べます。心不全の診断や重症度評価に欠かせない検査です。
  • 血液検査(BNPなど): 血液中のホルモン(NT-proBNP)の値を測定します。これらの値は心不全になると上昇し、重症度の指標になります。検査結果は当日中に判明します(他の採血項目と合わせて後日になる場合もあります)。
診断のための検査
5. 治療方法

心不全の治療は生活習慣の改善と薬物療法が中心です。また必要に応じて心不全の原因に対して手術療法などが有効な場合もあります。

特に、心不全の治療においては、薬物療法が非常に重要です。現在は日本循環器学会のガイドラインにおいてもエビデンスの蓄積を踏まえた治療薬の使用が推奨されており、特に「ファンタスティック・フォー(Fantastic Four)」と呼ばれる以下の4つの薬剤が、慢性心不全の治療における中心的役割を担うとされています。

<生活習慣の改善>
  • 塩分制限(食塩 1日6g未満目標):特に塩分(食塩)の制限は心不全管理の基本です。日本のガイドラインでも1日6g未満の食塩摂取が推奨されています。塩分を減らすことで余分な水分貯留を防ぎ、むくみや血圧の改善につながり心臓の負担を軽減できます。
  • 適度な有酸素運動: ウォーキングなどの有酸素運動で心不全の症状、予後改善効果が多くの研究で示されています。ただし病状により慎重に行う必要があるため、ご相談ください。
  • 禁煙、日常生活の見直し:喫煙は心臓や血管に大きな負担をかけるため、心不全患者さんは必ずタバコを控えてください。十分な休養・睡眠をとることや、毎日の体重チェック(急激な体重増加は体内に水分が溜まっているサイン)も悪化の早期発見に役立ちます。

<薬物療法>

ファンタスティック・フォー(Fantastic Four)の4薬剤

1. ARNI(Angiotensin Receptor-Neprilysin Inhibitor)
o 血管を広げ、心臓への負担を軽減する薬です。アンジオテンシンIIという血管収縮物質の作用を抑え、血圧を下げたり心臓のリモデリング(構造変化)を抑制します。
o ARNI(エンレスト®:サクビトリル/バルサルタン)は近年注目されている薬で、ネプリライシン阻害作用を加えることで心保護効果をさらに高めるとされています。

2. β遮断薬(Beta-Blockers)
o 心拍数や心筋収縮力を抑えることで、心臓のエネルギー消費を減らして心臓の負担を軽くする薬です。
o 慢性心不全の患者さんにおいて、長期的にみると心機能の維持・改善につながり、予後を良くする効果があります。
o 心不全急性期には注意が必要ですが、安定している慢性期患者さんには必須の薬剤です。

3. MR拮抗薬(Mineralocorticoid Receptor Antagonists:アルドステロン拮抗薬)
o スピロノラクトンやエプレレノンなどが代表的です。
o 体内の水分や塩分を過剰に保持する作用を抑え、むくみやうっ血を軽減します。
o 血液中のカリウム濃度上昇には注意が必要ですが、心臓保護作用が証明されています。
4. SGLT2阻害薬(Sodium-Glucose Cotransporter 2 Inhibitors)
o 本来は糖尿病治療薬として開発されましたが、利尿効果や心臓保護効果が認められ、心不全治療薬としても広く使用されるようになっています。
o 血糖値を下げつつ、余分な水分を尿とともに体外へ排出することで、むくみや血圧にも好影響を与えます。
o 糖尿病がない心不全患者さんに対しても使用できるようになっており、ガイドライン上も推奨されています。

その他の心不全治療薬

これらの「ファンタスティック・フォー」に加えて、症状や原因によっては下記の薬剤を併用することがあります。

• 利尿薬

o 体内の余分な水分を排出し、むくみや肺うっ血を改善します。
o 代表例:フロセミド、トリクロルメチアジド、トラセミドなど
o 即効性があるため、急性期の苦痛な症状を和らげる目的でもよく使われます。

• 血管拡張薬
o ニトログリセリンや硝酸イソソルビドなどは血管を拡張し、心臓への負担を軽減します。狭心症や虚血性心疾患を合併している場合などに使用することがあります。
• ジギタリス製剤
o 心拍数を制御しながら、ある程度の収縮力強化効果も期待できる薬です。心房細動などの不整脈を伴う心不全患者さんに用いられることがあります。
• 心房細動などの不整脈に対する抗不整脈薬
o 不整脈を適切にコントロールすることで、心拍数を安定させ、心臓のポンプ機能が改善する場合があります。

<手術療法>

心不全の原因に対する治療や、重症心不全に対するデバイス治療があります。
いずれも当院では実施しておりませんので、治療適応となる場合、近隣の総合病院にご紹介させていただきます。

  • カテーテル治療:
    カテーテル(細い管)を血管の中に通して行う治療法です。体への負担が比較的少なく、心筋梗塞や不整脈、弁膜症など様々な心臓の病気に対して用いられます。狭心症などの虚血性心疾患に対する経皮的冠動脈形成術(PCI)や、不整脈に対するカテーテルアブレーション(心筋焼灼術)治療、大動脈弁狭窄症に対する経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)などが代表例です。
  • 手術治療:
    カテーテル治療不適の虚血性心疾患に対し冠動脈バイパス移植術(CABG)、弁膜症に対し弁形成術や新しい人工弁と置き換える弁置換術などが挙げられます。
  • デバイス治療:
    心臓再同期療法(CRT)、植込み型除細動器(ICD)、左心補助人工心臓(LVAD)など、通常の薬物療法や手術療法でもコントロール不十分な場合に、デバイス埋め込み治療が選択される場合があります。

まとめ

  • ファンタスティック・フォー(ARNI、β遮断薬、MR拮抗薬、SGLT2阻害薬)を中心とした薬物療法が心不全の治療の基本。
  • 症状の改善だけではなく、心臓の保護や予後改善を目指して複数の薬を組み合わせることが重要。
  • 各薬剤とも副作用や注意点がありますので、医師の指導に従って正しく服用しましょう。
  • 症状が重い場合は、高度な治療が可能な専門医療機関を紹介します。

稲田堤ふくまるハートクリニックでは、心電図・心エコー・レントゲンなどの検査機器を充実させ、即日検査が可能です。心不全に関する不安や症状がある場合は、まずはお気軽にご相談ください。
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